「働く」とは何か。仕事を与えないことは、何を奪うのか。
仕事は、給料を得るためだけのものなのでしょうか。
そんな問いを考えさせられる出来事が、同じ日に二つありました。
一つは、萩光塩学院・山口県立大学・mi&goによる「ひっくりラボ」の4回目の授業で、萩市内の就労継続支援B型事業所「ハローフレンズ」さんを見学したこと。
もう一つは、障害者雇用をめぐる新聞記事を読んだことです。
その記事では、障がいのある人を雇用し、給料を支払っていた一方で、
十分な仕事を与えていなかった事例が報じられていました。
一見すると、
「給料が支払われているなら、問題はないのではないか」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、仕事には、収入を得ることだけでは説明できない意味があります。
朝起きて、行く場所がある。
今日やることがある。
誰かから任されている役割がある。
自分の手で何かをつくる。
昨日より、少しできることが増える。
そして、自分が社会の一部として必要とされていると感じる。
給料は生活を支えます。
そして仕事は、社会との接点や、自分が担う役割をつくります。
だからこそ、雇用し、給料を支払っているという事実だけで、その人の働く機会が十分に保障されているとは限りません。
仕事がなければ、その人は何を失うのか。
役割がなければ、その人の一日は、どのように変わるのか。
今日の見学は、そうした問いを考える機会になりました。
見てほしかったのは、作業だけではない。
ハローフレンズさんで高校生たちに見てほしかったのは、作業の内容そのものだけではありません。

どのような仕事があるのか。
その仕事は、どのように分けられているのか。
一人ひとりに、どのような役割があるのか。
支援員の方々は、それぞれの得意なことや状態を見ながら、どのように仕事を組み立てているのか。
そして、仕事があることで、その人の一日がどのように形づくられているのか。
そこを見てほしいと考えていました。

就労継続支援B型事業所は、一般企業で働くことが難しい方が、支援を受けながら仕事や生産活動に参加する場所です。
工賃は、もちろん大切です。
生活を支えるうえで、経済的な価値を軽く扱うことはできません。
一方で、仕事には、それとは別の価値もあります。
ゆっくりでも、丁寧にできる。
同じ作業を続けることができる。
人と関わりながら作業できる。
準備や片付けが得意である。
確認する力がある。
場の雰囲気を和らげることができる。
仕事には、さまざまな役割があります。
福祉の現場に求められるのは、「できないこと」を数えることだけではありません。
その人が担える役割を見つけ、仕事として成り立つ形に整えていくことです。
仕事をつくることは、簡単ではない。
その人に合った仕事をつくることは、決して簡単ではありません。
地域とのつながりが必要です。
企業との関係が必要です。
一つの仕事を、複数の工程へ分ける力が必要です。
品質を保つための手順や、確認の仕組みも必要です。
さらに、本人の状態を見ながら、無理のない範囲と、挑戦できる範囲を考え続ける必要があります。
その間にある仕事のつくり方を、現場で考え続けなければなりません。

だからこそ、今日の見学には大きな意味がありました。
ユニフォームの前に、考えるべきこと。
今年度のひっくりラボでは、高校生たちが「ユニフォーム」をテーマに、仕事、福祉、地域、そして社会の見え方を問い直しています。
ユニフォームを考えることは、単に服のデザインを考えることではありません。
その服を着る人は、どのような仕事をしているのか。
その仕事は、誰の役に立っているのか。
その人は、地域や社会の中で、どのような役割を担っているのか。
その仕事には、どのような誇りや意味があるのか。
そこまで考えて初めて、ユニフォームに込めるべきものが見えてきます。
ユニフォームは、仕事の意味を外へ伝えるものです。
同時に、着る人自身に、
「自分は、この仕事を担っている」
という実感を与えるものでもあります。
だから、かっこいい服をつくることだけが目的ではありません。
まず考えるべきなのは、
「どのような仕事を地域につくりたいのか」
という問いです。

今回の見学から、持ち帰った問い。
人が働くとは、どういうことなのか。
仕事があることで、人は何を得るのか。
役割を持つことで、その人の一日はどう変わるのか。
社会は、その人が持つ力を、どのように受け止めることができるのか。
今回の見学で、高校生たちは答えを得たわけではありません。
私たちも、まだ完成した答えを持っていません。
だからこそ、これからユニフォームを考え、現場の人たちと対話し、実際につくりながら、この問いを深めていきます。
仕事をつくること。
役割をつくること。
社会との接点をつくること。
そして、一人ひとりが必要とされる実感を持てる仕事を、地域の中につくること。
今日のハローフレンズさんでの見学は、その出発点になりました。

