「分かりやすさ」が、人を分けていた。
mi&goには、働く人が迷わないように、分かりやすくするためにつくった仕組みがありました。
ユニフォームの色を分けること。
「利用者」「指導員」「支援員」と、立場を呼び分けること。
どちらも、誰かを差別したり、上下関係をつくったりするために始めたものではありません。
むしろ、現場を分かりやすくし、安心して働けるようにするための工夫でした。
しかし、今振り返ると、その「分かりやすさ」が、人と人との間まで分けていました。
今日は、この二つの仕組みを見直した理由を書きます。
これは自分への備忘録であり、これからのmi&goをつくり直すための記録でもあります。
ユニフォームの色を分けたこと
以前、mi&goでは、ユニフォームの色を赤と黄色に分けていました。
利用者さんから、
「誰に聞けばいいのか分からない」
と言われたことがきっかけでした。
ユニフォームの色を見れば、質問する相手がすぐに分かる。
安心して声をかけられるようにしたい。
そのような意図で始めたものです。
確かに、色を見れば相手の役割が分かります。
しかし、今振り返ると、
「少し聞いてもいいですか」
「これは誰に確認すればいいですか」
「私では分からないので、一緒に聞きに行きましょう」
という一往復そのものが、人と人との関係をつくるきっかけだったのだと思います。
声をかける。
相手が応える。
必要であれば、別の人につなぐ。
その小さなやり取りから、対話が始まります。
色分けは、そのやり取りをショートカットしていました。
私たちは、分かりやすさと引き換えに、声をかけ、相手を知り、関係をつくる機会を減らしていたのです。
さらに、ユニフォームの色は、役割を見えるようにすると同時に、
「こちら側の人」
「あちら側の人」
という境界まで見えるようにしていました。
役割の違いを示すつもりが、人そのものを分ける仕組みになっていたのかもしれません。
「利用者」と「指導員・支援員」という呼び方
もう一つの反省は、呼び方です。
mi&goでは、制度上の名称である「利用者」「指導員」「支援員」という言葉を、日常の現場でも使ってきました。
行政手続きや記録の中では、こうした区分が必要です。
しかし、制度上の区分と、現場での人間関係は同じではありません。
「指導員」という言葉には、指導する人と、指導される人という関係が含まれます。
「支援員」という言葉にも、支える人と、支えられる人という関係が生まれやすくなります。
もちろん、職員には専門職としての責任があります。
利用者さんの状態を把握すること。
安全を守ること。
仕事を調整すること。
必要な支援や配慮を考えること。
その責任を曖昧にするつもりはありません。
ただし、専門職としての役割があることと、人として上下に分かれることは別です。
mi&goがつくりたいのは、誰かが一方的に教え、誰かが一方的に教えられる職場ではありません。
同じ仕事に向き合い、それぞれが役割を持ち、必要なときには助けを求め、互いに責任を果たす職場です。
しかし、私たちは制度の言葉を、そのまま日常の関係に持ち込んでいました。
その呼び方が、知らないうちに、立場の違いを人としての上下に変えていたのかもしれません。
言葉づかいの問題だけではなかった
現場では、親しさから言葉づかいが近くなりすぎることがあります。
年齢にかかわらず、敬語を使わない。
相手を一人の働く人として尊重しているとは言いにくい話し方になる。
もちろん、仲が良いこと自体は悪いことではありません。
mi&goには、立場を超えて自然に話せる関係があります。
それは、私たちが大切にしたいものでもあります。
しかし、親しさと敬意を失うことは同じではありません。
相手との距離が近いからこそ、言葉によって尊厳を傷つけることもあります。
こうした場面を、個人の言葉づかいや態度だけの問題として注意することはできます。
ただ、組織をつくる側として考えなければならないのは、そのような関係が生まれやすい仕組みになっていなかったかということです。
色によって人を分ける。
呼び方によって立場を分ける。
その仕組みを日常的に使いながら、
「対等に尊重し合いましょう」
と伝えても、言葉と設計が矛盾します。
問題は、現場の誰かだけにあったのではありません。
そうした関係が生まれやすい仕組みをつくった、組織の側にもありました。
これは、理事長である僕の責任です。
仕組みが、関係をつくる
文化は、理念を掲げただけでは生まれません。
毎日目にするもの。
毎日使う言葉。
誰に、どのように声をかけるか。
困ったときに、誰がどのように応えるか。
そうした小さな仕組みの積み重ねが、職場の文化をつくります。
そして、文化が一人ひとりの行動をつくります。
色分けも、呼び方も、誰かを傷つけようとして始めたものではありません。
むしろ、良かれと思ってつくった仕組みでした。
だからこそ、仕組みは難しいのだと思います。
善意から始まったものであっても、人を分け、対話を減らし、関係の上下を強めることがあります。
仕組みは、つくった人の意図どおりにだけ働くわけではありません。
現場でどのような関係を生んでいるかまで、確かめ続ける必要があります。
「支える側」と「支えられる側」を固定しない
mi&goのビジョンは、「いらないをつくらない」です。
これは、捨てられる物を減らすことだけを意味しているのではありません。
人や地域、経験を見て、
「価値がない」
「役に立たない」
と決めてしまう、その見方そのものを問い直す言葉です。
障がい福祉においても、同じだと考えています。
人を「支える側」と「支えられる側」に固定してしまえば、その人が誰かを支える力や、仕事を通して価値を生み出す力が見えにくくなります。
実際の仕事では、職員が利用者さんを助ける場面もあれば、利用者さんの経験や気づきに、職員が助けられる場面もあります。
得意な人が、不得意な人を補う。
困った人が、周囲に助けを求める。
助けてもらった人が、別の場面では誰かを助ける。
役割は、いつも一方向ではありません。
mi&goがなくしたいのは、必要な支援や配慮ではありません。
「この人は支える人、この人は支えられる人」と、人の役割を固定してしまう境界です。
2026年4月から変えたこと
この反省を踏まえ、mi&goでは2026年4月から方針を変えました。
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ユニフォームの色による区分をやめる
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日常の現場では「指導員」「支援員」という呼び方を原則として使わない
- 年齢や親しさにかかわらず、相手への敬意が伝わる言葉を使う
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誰に声をかけても、一緒に考えたり、必要な人につないだりできる職場をつくる
色分けをやめれば、それだけで対話が生まれるわけではありません。
呼び方を変えれば、それだけで互いを尊重できるわけでもありません。
大切なのは、誰に声をかけても無視されないこと。
分からない人が、分かる人につなぐこと。
困っている人を、立場にかかわらず支えられること。
仕組みをなくすだけではなく、その後に生まれる関係までつくる必要があります。
一見すると、小さな変更に見えるかもしれません。
誰かから強い不満が出たわけでもありません。
この仕組みが原因で、重大な問題が起きたという話でもありません。
それでも、呼び方や見た目のルールは、職場の文化をつくります。
文化は、行動をつくります。
行動の積み重ねが、ここで働く人の経験と、居場所の質を決めます。
だからmi&goは、言葉と見た目の設計から見直しました。
違いをなくすのではなく、上下にしない
私たちが目指しているのは、全員の役割を同じにすることではありません。
職員には、支援や安全管理、仕事の調整に対する責任があります。
一人ひとりに必要な配慮も違います。
得意なことも、苦手なことも違います。
役割の違いをなくすのではなく、その違いを、人としての上下にしない。
困ったときには助けを求める。
任された仕事には責任を持つ。
失敗したときには振り返る。
そして、互いを一人の働く人として尊重する。
そのような関係を、特別な理念ではなく、日々の当たり前にしていきたいと考えています。
分かりやすい仕組みは、現場を助けます。
しかし、分かりやすくするために人を分け続ければ、その区分が、いつの間にか関係まで決めてしまうことがあります。
だからmi&goは、仕組みをつくったら終わりにはしません。
その仕組みが、現場にどのような言葉を生み、どのような関係をつくっているのかを確かめ続けます。
間違いに気づけば、設計をやり直す。
「分かりやすさ」が、人を分けていないか。
これからも、その問いを持ちながら、mi&goの職場をつくっていきます。
NPO法人mi&go
理事長 金子拓司

